JL1NIE ’s blog

趣味のアマチュア無線やプログラミングについて徒然と。

山頂における伝搬について

HF編

 先週末はアクティベーションをお休みして主にチェイサーとして各局をお呼びしていました。朝一番のQSOは水ヶ森JA/YN-045に移動中のJF1NDT/1局でした。

 14MHzでのQSOはRST319とノイズレベルすれすれ、UTCで日付が変わった45分後の21MHzの交信ではRST559~569とシグナルが大変強力に入っています。自宅と水ヶ森の距離は直線にして85Km。水ヶ森と自宅の間には黒岳や雁ヶ腹摺山があり見通しはありません。

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さてこれはどのような伝搬なのかちょっと考えてみました。NDTさんのご意見では当日午前28MHzで東京・福島間で599で繋がっていたことから短時間のEsが出ていたのではないかとのこと。これをヒントに検討してみることにしました。

 まず当日朝のイオノグラムを見てみると110kmぐらいの高さに臨界周波数8MHzくらいのE層、215kmぐらいの高さに臨界周波数9MHz前後のF層があるのが判ります。

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臨界周波数Fcと最高使用周波数(Maximum Usable Frequency)Fmuの関係は電離層への入射角をθとすると以下の式になります。

 Fmu = Fc * 1/cosθ (セカントの法則というそうです)

ここで、2点間の距離を2d、電離層の高さをhとすると

 1/cosθ = Sqrt(d^2 +h^2) / h

となります。これに電離層の高さと2局間の距離をいれると

    1/cosθ ≒ 1.07

となり、入射角が大きいことからMUFはさほど高くなりません。これではE層による反射は厳しい状況です。これが400Kmぐらい距離が離れていると入射角が小さくなることからFcの2倍程度までMUFが上がり反射が期待できます。この例では18MHzぐらいまでは期待できそうです。ちなみに昼間密度が高いD層での減衰は周波数が高いほど少なくなります。Esが発生すると28MHzや50MHzで強力に入感するのはこのためです。一方、7MHzは昼間はD層での減衰が大きく何度もホップするような伝搬をすることが出来ません。そのため国内での伝搬が中心になります。一方、夜間になるとD層が消滅し減衰がなくなることからDXとの交信が可能になります。
 さて当日のイオノグラムをよく見てみると実はこんなEsが出ている時間帯がありました。

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 15分から30分程度で消滅してしまったのですが、Fcは16MHz近くまで延びておりNDTさんとの21MHzの交信時にこのEs層があったのかもしれません。21MHzでよく聞こえていた時間とEsの出現時刻が若干異なっているのですが、このイオノグラムは国分寺のものですので、水ヶ森と当局の中間点の大月市付近では現れた時間が異なっていると考えられます。
NDTさんの直観は正しかったようです。流石です!

V/UHF編

 さて今度はV/UHF編です。今晩(7/25)はSOTA仲間のJP1QEC局とJI1IHV局が大弛峠に前泊し、明朝の北奥千丈岳 JA/YN-012のアクティベーションに備えられています。お二人に430MHzで繋がるかどうか実験ということで、Longley-Rice Modelを用いた20MHz-20GHzにおける伝搬シミュレータを使ってシミュレーションをしてみました。
 このモデルは地形の情報も考慮しているので山岳地帯におけるV/UHF帯の見通し伝搬には良い予測結果が出そうです。

 ソフトウェアのインストールが不要なオンライン版のシミュレータを使って早速シミュレーションしてみました。こちらが大弛峠から430MHzでQRVしたときの結果。赤いマーカが大弛峠です。甲府市方面への見通しは良いのですが、残念ながら東京方面は山の影に隠れてしまっています。

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 一方、北奥千丈岳の頂上までいくと一気に視界が広がります。東京方面一円が交信可能エリアに入ります。素晴らしいですね。

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 さて、今後予定している山々はどんな感じでしょうか?こちらは枡形山無線倶楽部で予定している大菩薩嶺JA/YN-024です。こちらも素晴らしいロケーションです。

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 奥多摩三山のうち、まだ登っていない御前山JA/TK-006。こちらも東京方面には素晴らしいロケーションです。

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 こうやってシミュレーションしながらアクティベーション先を選ぶのもSOTAの楽しみの一つかもしれません。

※HFやV/UHF伝搬についてはぜひ識者の皆さまから詳しくご教示いただきたいと思っています。誤り等ございましたら、是非コメント欄でご指摘いただければ幸いです。