マルチバンドEFHW「Bagworm-EFHW」の製作
先日の大持山でのアクティベーションでは山頂が狭くGlue-EFHWの7/10MHzのエレメントを展開することが出来ませんでした。また木々の多い山頂では、ギボシの付け替えのためアンテナの上げ下げをしていると、枝にエレメントを引っかけてしまうこともしばしばありました。
少し前からエレメントの上げ下げが不要なトラップ付きEFHWを作っていたのですが、フルサイズでは張れる場所がやはり限定されてしまいます。そこで以前作ったLC共振器付きのEFHWチューナが14MHzのエレメントに7MHzをマッチングできることを利用して、少し変則的なマルチバンドEFHWを作ってみました。トラップがミノムシ(Bagworm)みたいなので「Bagworm-EFHW」と名付けました。作り方の詳細はこちら(P.36から)をご覧ください。
※2019/1/4 10MHzのトラップ位置及び全体寸法を見直しました。
※2019/1/5 計測結果を更新しました。
概要
今回のアンテナではエレメントとトラップの配置はこんな感じにしています。
14/18/21MHzは普通の1/2λバーチカルEFHWとして使います。7MHz/10MHzは1/4λのバーチカルとして使えるように10MHzのトラップを変則的な位置に置いてみました。エレメントサイズは7.2mの釣竿で以下のように展開した場合のサイズです。
使い方
- LC共振器付きEFHWチューナに付けて使う際は14-21MHzは1mのカウンタポイズを7MHzは2mぐらいのカウンタポイズ(ラジアル)、10MHzは7MHzのラジアルを小さく折りたたんだものを付けています。環境によって異なるようですのでカットアンドトライしてみて下さい。
- ハイバンドだけで使う場合には後述するトランス型チューナのみでOKです。面倒なチューニング動作が不要でGlue-EFHW並みにコンパクトすることができます。
EFHW用トランスの強化
今回作成したアンテナではトランス式マッチングボックスのコア材も2サイズ大きいFT82に強化してみました。
以前から1次側に入っているCが謎だったので少し実験してみました。EFHWの共振時の純抵抗が数KΩになるので、二次側に4.7KΩのダミーロードを付けてアナライザでトランスの特性をみてみました。
まず一次側のCを抜いて3.5-30MHzまでスイープした結果がこちら。
次にC(=150pF)を入れてスイープした時の結果はこちら。より高い周波数までSWR=2の円の中に入るようになり、広い範囲でマッチングが取れるようになりました。
アンテナアナライザによる測定
今回の製作では、アンテナアナライザがトラップの製作から完成したアンテナの特性をみるまで大活躍でした。こちらはトラップの共振周波数でのディップを見ているところ。大きな液晶が大変見やすいです。
またアナライザ本体に測定データを保存することが出来るので自宅に帰ってからPCにデータをダウンロードし詳しく調べることもできます。
スミスチャートによる解析結果
以下が完成版のアンテナ(1/4版)を13MHz~24MHzまでスイープした結果のスミスチャートです。真ん中の二つの円はSWR=1.5(内側)とSWR=2.0の円(外側)になります。
- 周波数を上げていくと赤い軌跡が時計周りに動いていきます。トラップでエレメントを3つに区切っているので共振点の分、3つの円ができます。
- マーカ1 14MHzの運用周波数です。ほぼ共振点で50Ω近くになりました。
- マーカ2 こちらは18MHz。共振点では若干インピーダンス高めですが問題ないレベル。
- マーカ3 21MHzも全般的に高めです。チャートから並列にCを入れると良いことが判りますが、他のバンドに影響を及ぼすのでこれぐらいにしておこうと思います。
- トラップのQがかなり高いので全般的にSWR=1.5の円の範囲に入っている帯域はあまり広くないようです。
考察
トラップがローディングコイルになる効果でアンテナ自体も多少コンパクトになったようです。基本的にトラップでエレメントを切っただけなので10m竿でフルに展開した時のフルサイズEFHWとの性能差は小さいと想像しています。ただし18MHz/21MHzでも常に14MHzのサイズのエレメントを展開するため、7m程度の短い竿ではエレメントを一部折り曲げたりすることで給電点が低くなり性能劣化が懸念されます。
重量も若干増加しています。Bagworm-EFHW(右端)が190g、Glue-EFHW(左端) 170g、EFHWチューナ(中央)が170gですので、7-10MHz対応だと190+170=360gになります。これで7-21MHz出られるならまあ仕方のないところでしょうか。
今後いつものようにWSPRを使ってフルサイズのEFHWとの性能差を検証してみたいとおもいます。
(おまけ)アナライザのキャリブレーション
アナライザを使ってきちんとインピーダンスの計測をする場合はキャリブレーションが必須のようです。どのくらい違いがあるのか3mの同軸の先にRH770を付けて144MHz帯で調べてみました。
こちらは同軸の先=アンテナ直下にキャリブレーションキットを付けてキャリブレーションした場合。
こちらはアナライザの手元でキャリブレーションした結果です。
反射波(S11)を測っている場合、同軸の電気長で行って返ってくる分(6m * 0.67= 4.02m)の位相が回ってしまい、j=0となる点が判らなくなってしまいました。