DE-5000電池内部抵抗測定アダプタの製作
数年前に入手した3セルのリチウムイオン電池のヘタリ具合を調べるために、電池の内部抵抗を測定できるLCRメータ DE-5000用アダプタを作ってみました。
電池の内部抵抗は直流法と呼ばれる0.5C/1.0Cで負荷に電流を流した場合における端子間の電圧差を電流差で割って求める方法と、交流法と呼ばれる1KHzの交流を電池に印可した時のインピーダンスによって求める方法があります。いずれの場合も電極や電解液の劣化を内部抵抗の増加として検出することができます。更に印可する周波数を変えて内部インピーダンスを複素平面上で解析する「電気化学インピーダンス測定」により、電解質の状態を表す「溶液抵抗」と、電極の電気二重層の「コンデンサ」及び電極性能を示す「電荷移動抵抗」が並列になった回路とが直列に接続されている「電池の等価モデル」のパラメータを推定し、電解質の劣化や電極の劣化の度合いを知ることも出来ます。
DE-5000は4線ケルビン接続ができる端子を持っており、リード線の影響を受けずにmΩオーダーの微小抵抗を計測することができます。またLCRメータでは1KHzのインピーダンスを計測することも出来ます。ただし電池自体が起電力を持っていますので、内部インピーダンスを測るためにはDC分をカットするためのコンデンサを追加する必要があります。
DE-5000を簡易内部抵抗測定器とする改造はすでにネット上に情報が沢山あります。今回はこちらの記事を参考にケルビン接続アダプタを改造してセルの内部抵抗を測ってみました。
材料
DE-5000のテストリードケースTL-21と、1μFのフィルムコンデンサ、1.5MΩの電荷放出用のカーボン抵抗、TL-21のリード線が短すぎて使いにくかったので2線シールドケーブルで延長リード線を作りました。
作り方
前述のこちらのサイトを参考しています。
まずはDCカット用のコンデンサを追加するためにTL-21のSense/Force線共にパターンカット。
1μFのフィルムコンデンサと、Sense側のコンデンサの電荷放出用の1.5MΩを取りつけました。1.5MΩはパターンを跨ぐためショートしないように熱収縮チューブで覆っています。またTL-21のリード線を外して50cmの2芯シールドケーブルで延長し、先端のミノムシクリップの部分でシールド線の赤線・白線を接続しています。なおシールドはクリップに接触しないように熱収縮チューブ等で加工してください。
最後にテスターで各端子の導通チェックとSense/Force線がDC的に切れているか確認し、基板をケースに戻して完成です。
計測してみた
(1)アルカリ電池
まずはアルカリ電池から。端子への当て方でかなり抵抗値が変わるため電池ボックスに入れて計測しています。こちらはまだ新しいセブンイレブンのアルカリ電池。142mΩでした。
次に自宅の廃電池入れから拾ってきたアルカリ電池。251mΩとかなり高めです。
(2) エネループ
次に近くに転がっていたエネループを測ってみました。2本を測ってみて121mΩと108mΩ。
充電器が充電エラーを出し始めるのが200mΩぐらいらしいので、そこそこ優秀です。電池ごとにバラつきがあるようなのでリフレッシュ充電しておくことにしました。
※二度リフレッシュした後の内部抵抗はこちら。
二つとも71mΩに復活しています。
(3)鉛蓄電池
次は秋月のシールドバッテリーです。
509mΩ。もう何年も充電していないのでサルフェーションおこしてるかも知れません。
(4) リチウムイオン電池
いつもアクティベーションで利用している3セルのリチウムイオン電池です。数年間にハムフェアで出回っていたものを融通していただきました。
保護回路としてセイコーインスツルメンツのS8233Aを使っており各セルの電圧をモニタしています。充放電の切り替えにはPch MOS FETの4435Dを使っています。内部接続はこんな感じ(7M4EZB局に教えていただきました)。3セルまとめて充放電の制御をしているためセルバランスが崩れていないか気になります。
セル毎の電圧を測るため、ちょっと勿体ないですがパッケージをはがしました。
計測した結果、各セルの内部抵抗は65mΩ、57mΩ、74mΩとなりました。若干低すぎるような気もしますが、ほぼ新品に近い状況のようです。セルパッケージ3個をローテーションして使っているため、月に1度フル放電するかしないかというレベル。まだまだ行けそうな感じです。
最後に
セルバランスが崩れていたらセルバランサのついたBMSでも付けようかと思ったのですが、とりあえず大丈夫そうでした。最近のラジコンやドローン用のバッテリはバランス充電用の端子もついているようですので互換コネクタを付けて、このような充電器で充電するも良さそうです。